今回は、フランス語圏つながりで、フランス語圏のアフリカ・ニジェールにまつわるアルバイトの経験談を書こうと思う。ニジェールにまつわる、とは書いたが、学生時代に行った短期バイトの話だ。
そのバイトで私は、ある探検家が十年以上前ニジェールで辿った移動経路の緯度・経度を割り出す作業を担当した。彼が書いたメモの中の風景の記述と、今の衛星画像(Google Map)を照らし合わせて、彼が通った地点の緯度・経度を特定するのだ。
探検家は、目に付いた物事や自分の行動を、ほとんど数分毎に書き付けていた。彼は船に乗って川を遡り、車で国道(ほとんど国道しかないのだが)を通り、たまにある大きな街を歩き回る。移動中、川が蛇行したり、車が三叉路に当たったり、街でモスクを見かけたりすると、必ずメモを残していた。植物や動物(ラクダ)、地形の記述もあった。私は空調の良く効いた部屋で、探検家のマメさに畏怖の念を抱きながら、Google Mapの衛星画像を見て移動経路を特定していった。
おおよそ大変なバイトではなかった。メモは短いが丁寧に書かれていた。道はそう多くなかったし、メモに現れる街の名前もGoogle Mapで検索することができた。
ただ、船での移動を追うのは少し難しかった。私がバイトしていた月はニジェールで乾期に当たり、衛星画像上、川の水を確認できないことがしばしばあった。黄土色の大地に轍(わだち)のような溝を見つけ、探検家はそこを船で移動したと解釈して何とか事なきを得た。
結局、延べ20~30時間程度、ニジェールの乾燥地帯(ほとんど砂漠)の衛星画像を見続けた。バイトを終えた後、探検家が移動していた場所がテネレ砂漠と呼ばれていることを知った。乾燥度合い、面積の広さ、砂丘の高さ等々から、「砂漠の中の砂漠 désert des déserts」と呼ばれているらしい。
【2020年8月23日追記】
2020年8月現在、ニジェール人2名とフランス人(NGO職員)6名の計8名が襲撃された事件により、ニジェールとフランスの関係は微妙になっている。ニジェールは治安が不安定な地域とみられている(外務省の海外安全ホームページはこちら)。情勢が落ち着き、テネレ砂漠を観光客も気軽に訪れることのできる日が早く来るといいなと思う。(以上)