
今回は、第二外国語にフランス語を選択した法学部生(かつて私がそうでした)に向け、初級(入門を一通り終えた)レベルで取り組めるリーディング素材を3つ紹介します!
フランス語の単位は取れたけど、この知識の使い道って一体…と感じている1, 2年+生に、是非知ってほしい内容です。これから紹介する文章は、文法的に難しすぎず、専攻と関連があるものです。読めば、フランス語に慣れるだけではなく、専門科目の理解が深まった!という瞬間がきっと訪れると思います。ちなみに、翻訳が手に入る素材なので、フランス語の知識に少し不安があっても大丈夫です。
専攻/テーマ別に3つ紹介します。
- 日本法:フランス民法典(契約法)の条文
- ヨーロッパ政治:欧州議会の広報記事
- 国際法:国連憲章の条文
日本法:フランス民法典(契約法)の条文
【素材の紹介】
読解の易しさ ★★★☆☆
条件法や関係代名詞節が所々で使われ、読むと文法の復習になる。
専攻との関連度 ★★★☆☆
家族法などと比べた場合、内容が日本法と似ている。
【凡例】
突然ですが、以下の条文を眺めてみましょう。
民法典1130条
L’erreur, le dol et la violence vicient le consentement lorsqu’ils sont de telle nature que, sans eux, l’une des parties n’aurait pas contracté ou aurait contracté à des conditions substantiellement différentes.
民法の予備知識が少しあれば、この文から色々な知識を仕入れることができます。
①日本の法律用語とフランス語の対応関係
erreurは「錯誤」で、dolは「詐欺」だな。partieは「契約当事者」かな…
②条件法のもつ「現実とは逆の事態」というニュアンスの具体例
de telle nature…n’aurait pas contractéは「契約しなかったであろう性質の…」かな…
【素材の入手法】
フランス民法典の条文は、公式サイトLégifranceで手に入ります。
以下のURLに飛び、「Accès direct à un code en vigueur」欄のNom du code(法典名)で、Code civilを選択し、Consulterをクリックすると、最新版が見られます。契約法は第1100条~です。
https://www.legifrance.gouv.fr/initRechCodeArticle.do
以下の文献は、2016年時点のフランス契約法の日本語訳(一部)です。手助けになります。
荻野奈緒・馬場圭太・齋藤由起・山城一真(2017)「フランス債務法改正オルドナンス(二〇一六年二月一〇日のオルドナンス第一三一号)による民法典の改正」同志社法學69巻1号https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/27137/?lang=0
ヨーロッパ政治:欧州議会の広報記事
【素材の紹介】
読解の易しさ ★★★★☆
他の統治機関の広報と比べても、必要な文法知識・語彙は少ない。
専攻との関連度 ★★★★☆
現在のヨーロッパ政治に関心があるなら良い導入になる。
【凡例】
記事の見出しをいくつか見てみましょう。公衆衛生、財政、外交に関する幅広いテーマが取り上げられています。(2020年7月1日閲覧)
・Coronavirus : 10 mesures de l’Union européenne pour lutter contre la pandémie
・Budget à long terme : l’UE a besoin d’un financement approprié pour faire face aux crises, selon les députés
・Futures relations entre l’UE et le Royaume-Uni: des “règles du jeu équitables” pour garantir une concurrence loyale
この中から、二番目のEU予算に関する記事を見てみると、リード文(見出しの次に来る導入文)は以下の通りです。
Lors d’un débat sur le budget à long terme de l’UE, les députés ont déclaré que l’UE devrait avoir les moyens financiers de surmonter des défis tels que le coronavirus ou la migration.
出典:https://www.europarl.europa.eu/news/fr/headlines/priorities/budget-et-ressources-propres/20200309STO74453/l-ue-a-besoin-d-un-budget-a-long-terme-approprie-pour-faire-face-aux-crises
文の核は、les députés ont déclaré(議員が明言した)です。これに、Lors de~(~の際に)という副詞節と、déclaré que以降の名詞節が付属しています。名詞節の中で、tels que以降は、des défis(困難)の内容を例示しています。
【素材の入手法】
広報記事は、欧州議会の公式サイトで閲覧できます。フランス語特有の表現に立ち止まっても、英語版を見れば打開可能です。英語版で対応する表現を英和辞典で調べることによって、フランス語版の表現の意味を推測しましょう。
フランス語版
https://www.europarl.europa.eu/news/fr
英語版
https://www.europarl.europa.eu/news/en
国際法:国連憲章の条文
【素材の紹介】
読解の難易度 ★★★☆☆
条約ならでは言い回しや表現があるものの、特殊な単語は少ない。
専攻との関連度 ★★★★★
国際機構法や安全保障法では必須の原典。講義でやる前でも、目を通してしまおう!
【凡例】
国連憲章第27条3項(抜粋)を見てみましょう。安全保障理事会の拒否権に言及しています。
Les décisions du Conseil de sécurité sur toutes autres questions sont prises par un vote affirmatif de neuf de ses membres dans lequel sont comprises les voix de tous les membres permanents,…
les voix de tous les membres permanents(常任理事国全ての投票)を含む、vote affirmatif de neuf de ses membres(9理事国の賛成票)が必要、とあります。逆に言えば、常任理事国の賛成票が一つでも欠ければ、décision(議決)が通らないことになります。これが常任理事国に拒否権があると言われる所以です。詳細は、27条全体や前後の条文を読んで、確認してもらえればと思います。
【素材の入手法】
日本語版も以下URLで閲覧できますが、原典はあくまでフランス語版の方です。なので、ある日本語訳(私の上記の訳も含め)を唯一絶対の正解として受け取るのではなく、「自分だったらどう日本語訳しようかな」と考えながら参考にすると良いと思います。
フランス語版(国連公式サイト)
https://www.un.org/fr/charter-united-nations/index.html
日本語版(国連広報センター)
https://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/
おわりに
今回は、法学部のフランス語初級者向けに、フランス民法典、欧州議会の広報記事、国連憲章の三つをおすすめしてきました。これらの文章を見て、自分でも読めそうだと思った方は、是非リンク先のリーディング素材に当たってもらえればと思います。この記事を読んだあなたが、フランス語をやってよかった、と今後感じる機会が、1回でも増えますように…。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは、また別の記事で。